HSPの人は対人恐怖症になりやすい

対人恐怖症という悩みを抱えてカウンセリングを受ける人の中には、HSPの特徴が該当する人はたくさんおられます。
HSPは、医学的診断名ではありませんが、事実としてHSPの特徴が当てはまる人はいて、カウンセラーは、その人達が対人恐怖症で悩んでいるというケースに出会うことがあります。

情報や刺激に対する敏感さは、周囲からの視線や思いの感じやすさです。
HSPの人は、生活をしている中でHSPでない人に比べると他人のしぐさや視線などに気づきやすい可能性があり、他の人よりも多くの刺激の中で生活していると考えられます。

他人より多くの刺激を感じているだけで対人恐怖症になるわけではありませんが、そこに下記で説明するような条件が加わることで『他人の視線が怖い』、『自分は嫌われているかもしれない』という自意識が芽生えるようになり対人恐怖症につながっているのではないかと感じます。

他人に対する不安、疑心を強くする固定観念

HSPの人は、他人からの影響を受けやすいという特徴を持っているため、自分が育った家庭環境から受ける刺激にも他人への不安や疑いが強くなることがあります。

例えば、両親が他の人のことを疑ったり、否定したりする発言をすることが多い場合は、それを聴いて育った子供は、『他人は警戒すべき存在だ』という固定観念が強くなってしまう可能性があります。

家庭の中で他人を疑う会話、他人の批判をする会話、他人の問題点を指摘する会話などが中心になってしまうと世の中の人は怖いと思うようになることがあります。
このようにして自分の外側に他人を警戒するべき理由を作ってしまうと対人恐怖症になる可能性が高くなってしまうのです。

自己肯定感を下げる親子関係

他人を警戒する気持ちが強くなり、自分の外側に対して警戒する理由を刷り込まれて成長することも対人恐怖症になる要素ですが、自分の内側に対人恐怖症になる理由が作られてしまうこともあります。

『バカ(アホ)』、『こんなこともできないのか』、『よその子に比べて・・・』、『あなたにできるはずがない』、ということを親から言われ続けて育つと、その人の中で自分を評価する基準が上記のような視点になってしまいます。

自分の心の中に他人から批判た否定をされるのは当然だと思うような自己意識が育ってしまうと他人の視線や表情、しぐさの理由が、自分の問題点にあると思ってしまうようになってしまいます。
自分は人から非難や否定をされるはずだという認識で生活していると、生活の中で他人を警戒する感覚が強くなってしまいます。

誰でも自分のことを否定されながら育ったら自己肯定感が上手く築かれないということがおきますが、HSPの人の場合は親から受けた言葉がくっきりと自己意識として形成されてしまう点が対人恐怖症になりやすい要素のように思います。

他者への迎合を生み出す傷付きやすさ

HSPの人は敏感で傷付きやすい性質があるため、人に拒絶される、嫌われる、否定される、怒られるといったことが極端に苦手です。

たぶんHSPではない人の数倍、数十倍のダメージを受けるのではないでしょうか。他人が怒られているのを見るだけでダメージを受けるくらいですからね。

自分が傷付くことを避けようとすれば、必然的に相手に迎合することになり、相手を優先する習慣が形成されます。
結果として自分を蔑ろにしてしまい、自分がどうしたいのかがわからなくなってしまう。

何事も相手次第の感覚になっていく中で他者とのかかわりに対する不安や恐怖が出てくるのです。

HSPと対人恐怖症による複合的な苦しみ

HSPがの人が対人恐怖症になると症状に過度な反応をしてしまい、さらに他人の反応を拾ってより不安になる悪循環に陥ります。

不安や恐怖はリラックスできれば収まりやすいのですが、逆に緊張の度合いが高まって強化されてしまう。
ただでさえ疲れやすい性質を持つHSPにより強い負荷がかかる。

家に帰っても十分な休息が取れないまま眠りにつき、また学校や職場に行くという繰り返しで回復が追い付かなくなることでより些細なことに反応しやすくなります。

もともと回復のために必要とする一人の時間が延びて一人の世界に入り込む状態になり、相手の反応をネガティブに捉えてどんどん膨らませる。
最終的に妄想のレベルに至っている人も少なくありません。

HSPに対人恐怖症が重なることで抱える苦しみは耐えがたいものがあるのです。

HSPの人がカウンセリングを受けるメリット

ある意味、HSPと対人恐怖症は親和性が高いのですが、自分は対人恐怖症かもしれないと感じてカウンセリングを受けに来られる人は、それがきっかけで自分がHSPであることを知るということが多いです。

自分がHSPであることを知ることで、これまで抱えていた生きづらさの理由がわかって気持ちが楽になるという人も少なくありません。
また自分がHSPだと思うことで、自分をコントロールするヒントが見つかって心理状態が安定するようになったという人もいます。

対人恐怖症がきっかけでカウンセリングを受けたことが、HSPという自分の特徴を知り、コントロールするための手掛かりを掴めたのなら、その後の人生においてメリットとなったと言えるでしょう。

HSPではない人と異なる感覚を言語化できる

HSPの人は幼少の頃からどこか他者との違いを認識していたものの、言葉にすれば自分が変に思われるかもしれないと抑えてきたところがあります。

その場その場で空気を読み、合わせることが得意なので周りからは普通に見えていた。
でも、実際は作り込んだ自分を演じていてものすごく無理をしている。
何年も続いていくうちに当たり前になってしんどさすら感じなくなっていた。

普段の生活において本当の自分を表現できる機会は一人の時間だけという人がほとんどです。

カウンセリングでは今まで出さなかった自分の本当の感覚を話すことができます。
自分は何が好きで何が嫌いで、何に対してどう感じてどう思ってどう考えてといったことを言葉にしていく中で自分に軸ができる。
自己肯定感が高まって自分らしくいられる時間が増えるのです。

カウンセリングで対人恐怖症への認識を正す

カウンセリングで大切にしていることは、『HSP = 対人恐怖症』ではないということを認識していただくことです。

HSPである特性は生まれ持って身につけているものですが、他人や社会への固定観念、自己意識は生まれてから身に付いている部分が多いので、自分の努力で変えることができる部分と変えることができない部分を整理して対人恐怖症の克服を目指すことが大切です。

カウンセリングがきっかけで自分がHSPであることを知り、自分が抱えている悩みを分析できるようになることは、対人恐怖症を克服するためには必要かつ有益な経過です。

最後に〜HSPに対する批判について〜

HSPは、医学的な診断名ではないということから、自分はHSPだと言うと「そんな感覚は誰にでもある」、「それは言い訳をしているだけだ」という言葉を投げかけられたと言う体験をしたことがある人もおられるようです。

しかし、重要なのは、HSPという言葉が医学的な診断名であるかどうかではなく、人間の感覚には個性があり、刺激に対する感じ方が人によって大きく違うことがあるという事実です。

私は、自分の感覚の過敏さが日常生活の中で負担になっているのであれば、その負担が軽くなるようにしたいと思うのは当然で、そのためにHSPかもしれないと仮定して改善に取り組むのは決して悪いことではないと考えています。

特に臨床の現場にいるカウンセラーの立場からは、ある特徴を持った人達をHSPとすることの是非は重要ではなく、HSPと言われる特徴によって生じている悩みを軽減、解決することが重要だと考えています。


そのため、自分が抱えている悩みはHSPが関係しているかもしれないと感じているけど、そう思うことは良くないのではないかと感じている人がおられたら、気にすることなくカウンセリングを利用して頂ければと思っています。


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