カウンセラーに知識が必要な理由

カウンセラーは、どのような学校でカウンセリングを学んだとしても、プロとして活動するためにはある程度の知識が必要となります。
カウンセラーに知識が必要な理由は、カウンセリングの安全性と専門性が知識によって高められるからです。

基本的な知識を学ぶ機会は、学生時代に専門課程で勉強をする時や資格取得に向け勉強している時になりますが、実際にカウンセリングをするためには、その時に学んだことをさらに深めて学び直すことが必要になります。

カウンセリングと安全性

安全性は、カウンセラーの知識によって、人の心理の仕組み、心理的負荷とは、性格の違い、ストレスレベル、病状、などに配慮して行われることで保たれます。
カウンセラーが無知である場合、不適切な言葉を使ったり、アドバイスの内容は良くても心に負荷を与えるタイミングで伝えたり、病状に合った提案が
できないということが起きてしまいます。

人間の心の状態は、アプローチによって一瞬で状態が変わることもあるので、人の悩みの相談を受けるカウンセラーは、さまざまな角度からクライエント
の心に配慮するための知識が必要となります。
カウンセリングで安全性を保つことは、悩みを改善する以上に大切です。

カウンセラーの専門性

専門性は、心理学、精神医学、性格学、脳科学などに関して学術的な知識を得ること、カウンセリングを含めて多くの人の話を聴くこと、悩みの改善の経過に関わること得られる知識によって高まります。

クライエントの話に対して感情的を受け止め、肯定的、共感的に対応するだけでなく、自分の頭の中にある学術的、経験的な知識と照らし合わせてクライエントのことを理解していくことが必要です。

カウンセリングでは、家族や友達、職場の同僚などには話せない、話をしても解決につながらないと思える話を聴くことになるので、その内容を深く理解
するための知識は必要不可欠です。

学術的な知識と経験的な知識

カウンセラーに必要な知識を大きく分けると2種類に分けることができます。
その2つは学術的な知識経験的な知識です。

どちらの知識も必要で、その重要性をしっかりと理解しているからこそ良いカウンセリングができるのです。
しかし、知識が足りない場合、カウンセリングに偏りが出てきます。

下記では、知識が足りない場合はどんなカウンセリングになる恐れがあるかについて説明しています。
知識が足りないことでどのようなカウンセリングになってしまうのかを知ることで、カウンセラーにとっての知識の重要性を感じて頂ければと思います。

学術的な知識が足りない場合のカウンセリング

学術的な知識が足りなければ、カウンセラーが自分自身の人生経験や過去のカウンセリングの経験によってカウンセリングを進めてしまいがちになります。

さらにカウンセリングに関する重要な知識が不十分だと、話を聴くことによってクライエントに表れる効果を待つことができず、話の重要な部分に触れる前アドバイスをして、クライエントを気づきや洞察に導けないカウンセリングになってしまいます。

また、心の病についての知識が乏しいと、病院に行くことを勧める必要があるクライエントに対して、カウンセリングだけで改善に導こうとして状態を悪化させてしまう可能性もあります。

いくら話を聴くことが上手くても、これまでにいろんな人の相談に対応してきたとしても、カウンセリングは経験によって得た知識だけでできるもので
はないことをカウンセラーはよく理解しておかなければなりません。

学術的な知識を高めるための方法

学術的な知識が足りないカウンセラーは、心理学の論文に目を通すこと、心理学の論文が引用してある書籍を読むことをお勧めします。
カウンセラーは、エビデンス・ベースド・アプローチを意識してカウンセリングを行うことが求められます。
エビデンスという客観的な根拠に基づいたアプローチがエビデンス・ベースド・アプローチですが、エビデンスについての知識を得る方法が論文を読むことです。

エビデンスを学ぶことは、安全性を高める最良の方法です。
カウンセリングは安全性があってこそ成り立つ援助方法なので、カウンセラーはエビデンスに興味を持って学ぶことが大切です。
私は、心理学だけでなく脳科学も好きなので、それらの知識はカウンセリングで大いに役立っていると感じています。

経験的な知識が足りない場合のカウンセリング

経験的な知識が足りない場合も偏った対応のカウンセリングになってしまう点は学術的な知識が足りない場合と変わりません。
クライエントの話を学術的な知識とだけ照らし合わせてしまう、その結果、そのクライエント特有の事情を確認できていないまま学術的な観点からのアドバイスをしてしまうということが起こります。

クライエントが抱えている症状や状態は、学術的な名称に当てはめることはできたとしても、現状に至るまでの経緯や理由はクライエント個人が抱えている特有のものです。

その事情を確認しないままアドバイスをすると的外れなアドバイスになる可能性があります。
また、クライエントは、じっくり話を聴いてくれるからこそカウンセラーを信頼することができるので、信頼関係がしっかりと構築できない段階では、いくら正しいアドバイスを提供しても受け入れてくれないことをカウンセラーは知っておくことが重要です。

カウンセリングは、模範的なカウンセリングをすることによって悩みの改善に導くことができることもありますが、性格や体質、育った環境、人間関係など、クライエントは特有の事情を抱えてカウンセリングに来られているので、柔軟なアプローチが求められることの方が多いです。
カウンセリングの中で柔軟なアプローチができるかどうかは、経験の差が影響します。
経験的な知識が多いということは、カウンセリング技術の幅が広いということでもあるのです。

経験的な知識を高めるための方法

カウンセラーとしての経験的な知識を増やすためには、たくさんカウンセリングをするというのが近道ですが、そう簡単に臨床実績が増えていくわけではありません。
そのため、カウンセラーが経験的な知識を増やすには経験のあるカウンセラーからさまざまな事例を学ぶことをお勧めします。
事例検討会などがあれば積極的に参加をしたり、事例を集めた書籍もあるので読んでみるのみいいでしょう。

弊社では、それぞれのカウンセラーが担当している事例を日頃からシェアするようにして、自分が担当しない事例についても学ぶことができるようにしています。
私の場合は、指導やカウンセリングの進捗確認のために他のカウンセラーの事例について話を聴くことがありますが、さまざまな事例の情報を得ることが有益な学びとなっています。

安全性と信頼性のあるカウンセリングを提供するために

プロのカウンセラーは、学術的な知識と経験的な知識を自分の中で融合させて効果的に活用しています。
机の上で得られる知識も大切ですが、実際の臨床の中で得らる知識はその場でしか得られない貴重なものです。

プロとして良いカウンセリングを提供できるカウンセラーは、この2種類の知識を上手くカウンセリングに反映できる能力があると感じています。

さらにもう1つプロのカウンセラーにとって重要な知識が“無知の知”です。
これは自分が何を知っていないかを知っているという自分自身の情報です。

自分には現在どの知識なら豊富で、どの知識が不十分かを知っておくことで安全性を保ったカウンセリングができるのです。
ある意味これは一番重要な知識といえるかもしれません。
なぜなら、カウンセラーとして経験をどれだけ経験を積んでも知らないことや出来ないことはあるので、それら自覚し続ける必要があるからです。

私自身も、上記の2つの知識をカウンセリングに有効活用することと、自分には知らないことがあるという自覚を大切にカウンセリングをしています。
もし、臨床経験を積み始めたばかりの方、まだ臨床経験が少ない方は参考にして頂けると嬉しく思います。